尚安がその矢を拾って見ると、普通には見えない。少し近寄り弓を取り直し、弓の弦(つる)につがえてドウと放つと又三町余りを射通し、奴留湯の鎧の袖にチョウと当たった。敵の人々はこれを見て
「世には精兵も多きものにてぞ有らん。昔の物語に聞き伝えしを、今見る事の不思議さよ。」
と一度にどっと感じ入る。

かくて味方は順次駆けつけ集まって今は三百ほどになっていた。いつまでためらうかと鬨(とき)の声を上げて突いてかかる。敵も支えてここが頑張りどころと攻戦する。天地も震動し、東西も暗くなって、高煙を立てて四・五度程揉み合ったがついに立花へと退却した。 味方は勝ちに乗って勢いよくあちらこちらの難所に追い詰めて数十人を討ち取り、勝鬨を上げて帰還した。

古賀原合戦:12│3