この時毛利家より三戸新兵衛と言う者が使いで来ていた。
「これは氏貞の御軍中への目代なり」
と人々は言う。氏貞が新兵衛に仰せになるには
「和殿の来たり給ふ事、悦入て覚候。某が忠心よく見置て委敷語てたび候へ。又は田舎の軍の様をも見物し玉へ」
と幕内に招き入れる。 さて、先陣・後陣も調い、鬨の声をドッとあげて、矢軍がすでに始まる。矢軍が終われば、太刀を抜き鑓(やり)長刀の鞘をはずし、入り乱れて攻め戦う。ここに緋縅(ひおどし)の鎧を着た、その日の大将らしき武者が、鹿毛の馬に乗って鞍かさに立ち上がり、大音声で名乗った。 >次へ
飯盛合戦:1│2│34