「ここに某存ずる旨の候。某他国の者と申して、奴留湯に奉公し、敵の油断を見て注進し候はん時、押寄りて討取り給はん事いと安かるべくや候はん。」
と言う。この案に一同同意したので、主馬允は下人の姿を装い、許斐に至って在所の者に頼み、敵方に申し出るのには
「某は肥前晴気の者にて候か、主人のために商いをいたし、所々に往来つかまつるところに、盗人に剥ぎ取られ、かようの躰(てい)に成りて候。在所に帰りたくは候へども、盗人に取られたると申すは仮事にて、みだりに失ひ候かと、主人折檻いたし候はんは必定と覚へて候へば、帰らんことは不成候。願わくはこの御城中に召抱えられて、命をつなぎ申やうに、ひらに奉頼。」>次へ
氏貞嶽山開城:1234│5│6789